【背景・目的】
実験動物として広く用いられているマウスは、顔や体を毛繕いする。このような行動をグルーミングと呼ぶ。グルーミングの頻度や長さ、対象部位はマウスの心理的、身体的な状態を知るための有用な指標として知られており、薬剤投与やストレス刺激などによってそのパターンが変化する。現在、多くの研究において目視によるグルーミング行動の評価が行われているが、この方法は実験者の負担が大きい上に客観性や再現性が不十分である。本研究では、画像の特徴を学習することに優れた深層学習手法、畳み込みニューラルネットワークを用いて、動画からマウスの顔と体のグルーミング行動を自動判定する方法の開発を試みた。
【方法・結果】
マウス (BALB/c) をケージに入れ、上部に固定したビデオカメラを用いて、約10分の動画を30本撮影した。各動画をフレームごとに分割した画像の集合に変換し、それぞれの画像を「グルーミングなし」、「顔のグルーミング」、「体のグルーミング」のいずれかに分類・ラベル付けした。30動画のうち23動画を畳み込みニューラルネットワークの学習に使用した。つづいて、学習に用いていない7動画のうち2動画を用いて、各フレームがどの分類にあたるかを学習済み畳み込みニューラルネットワークに予測させ、人によるラベル付けと比較した。その結果、体のグルーミングを約87%、顔のグルーミングを約78%の精度で識別することができた。一方で、不自然な誤判定や中断判定によって、体のグルーミング回数が過推定されていた。そこで、それらを改善するためのフィルターを定義して適用し、改善を試みた。最後に、確立したシステムを用いて、残る5動画の評価を行った結果、体のグルーミングを約88%、顔のグルーミングを約81%の精度で識別することができた。また、5動画におけるグルーミング回数の評価は人の観察と畳み込みニューラルネットワークの予測で同等であった。
【結論】
本研究によって、畳み込みニューラルネットワークを用いた部位別のグルーミング行動の自動判定法が確立できた。