【背景】
マウスの自発運動は、マウスの体調や精神の状態を評価するための重要なパラメータである。マウスの自発運動の測定方法として、赤外線センサーによる動きの検出、回転かごを回した数の測定、肉眼的な観察による行動量の評価などの方法が用いられている。しかし、これらの方法には特別な機器が必要である、通常の飼育環境とは異なる、感度が低い、などの問題点がある。我々は簡便かつ汎用性の高いビデオ撮影機器を用いて、黒い被毛を持つ実験用マウスの自発運動を通常飼育環境下、24時間連続で測定できる方法を開発した(Kobayashi 2020)。しかし、白い被毛を持つ実験用マウスの撮影・解析方法は確立できていない。
【目的】
本研究では、白いマウスの自発運動を24時間にわたって評価できる撮影環境と解析方法を確立し、それを用いて馴化、週齢、性別による自発運動の違いを評価することを目的とした。
【結果】
最大15個の黒いケージの中に黒い床敷を入れ、その中で白いBALB/cマウスを12時間周期の明暗周期の下で飼育した。ケージ上方にカメラを設置してマウスの動きを撮影し、撮影した動画をリアルタイムで解析用のコンピュータに転送した。動画の各フレーム画像を二値化してマウスの位置を検出し、1秒ごとのマウスの重心の移動量を自発運動量として表した。24時間の自発運動量を解析した結果、マウスは20-60分の積極的に運動する期間と、60-120分の休息している期間を繰り返していることがわかった。更に、明期の終盤において運動の頻度が増加し、暗期の終盤において運動の頻度が減少する様子が見られた。また公知の様に、明期と暗期を比較すると、暗期の自発運動量の方が大きいことも確認された。飼育環境の変化に対する馴化の自発運動量への影響を検討するため、マウスをケージに入れた日から3日ごとに3回撮影したところ、日を追うごとにマウスの自発運動量が減少した。更に、4, 8, 12, 16, 32週齢のマウスで自発運動量を比較したところ、週齢の増加と共に自発運動量が減少した。一方、雌雄間では自発運動量に有意な差は見られなかった。
【結論】
白いマウスを24時間撮影し、その移動軌跡を追跡できる環境を構築した。飼育環境への馴化や性別、週齢が自発運動に与える影響を評価し、今後の研究応用への基礎となるデータを得た。

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