背景と目的: 遺伝子治療はこれまでアデノウイルスやレトロウイルスなどウイルス性遺伝子発現プラスミドベクターを用いた治療が行われてきた。しかし、アデノウイルスベクターの大量投与による過剰免疫反応での死亡事故などウイルス性遺伝子発現プラスミドベクターを用いた遺伝子治療にはリスクが大きいといえる。一方、非ウイルス性遺伝子発現プラスミドベクターはウイルス性ベクターと比較し、より安全性が高いが、遺伝子導入効率が低いという欠点もある。われわれはこれまで非ウイルス性遺伝子発現プラスミドベクターを用いた骨再生治療法の開発を試みてきた。今回、骨形成因子( Bone Morphogenetic Protein-2: BMP-2)遺伝子発現プラスミドベクターとelectroporationを用いた歯槽骨再生をラットにて試みた。材料と方法: Wistarラット雄の上顎第一大臼歯歯周組織へ非ウイルス性bmp-2発現プラスミドベクターを注入、直ちに50V., 50msec., 32puleseのelectroporationを実施した。3週間後に試料採取、非脱灰標本ならびに脱灰標本作成し、組織学的解析さらに骨形態計測学的解析を実施した。結果: ラット上顎歯周組織への遺伝子導入前と導入後の石灰化速度(Mineral Apposition Rate: MAR)を比較したところ、遺伝子導入3日から6日のMARが有意に増加した。また、一次パラメーターの比較においてもコントロール群と比較し、遺伝子導入群において骨形成方向への指標が増加した。結論: ラット歯周組織への非ウイルス性BMP-2遺伝子発現プラスミドベクター導入によって、遺伝子導入部位での歯槽骨の再生が認められた。今回の結果から、歯槽骨再生治療薬として、非ウイルス性骨形成因子遺伝子発現プラスミドが有効である可能性が示唆された。