【背景】現在、急性腎障害(AKI)に対する効果的な治療法はなく、AKIの病態機序の解明が精力的に行われている。鉄は必須微量金属元素であるが、一方で鉄過剰は酸化ストレスの原因となる。我々の研究グループでは、各種の腎障害モデルを用いて鉄除去による腎障害抑制効果を報告してきた。しかし、従来の鉄キレート薬、鉄摂取制限による非特異的な鉄除去は貧血が生じる。以前の報告で鉄由来の炎症と酸化ストレスの中心がマクロファージであることを報告した(=マクロファージ鉄ストレス)。本研究では、マウスの急性腎障害モデルを用いてマクロファージ鉄ストレスの役割を検討した。
【方法】LysM-CreマウスとFth floxedマウスを交配し、マクロファージ特異的Fth欠損マウス(FthKO)を作製した。FthKOマウスと野生型マウス(WT)を用いて、AKIモデルとして葉酸誘発性AKIモデルを用いた。葉酸誘発性AKI群(FA-AKI群)と対照群について、48時間後に血液、組織をサンプリングして解析・比較した。
【結果】WTのFA-AKI群におけるBUNと血清クレアチニンの増加はFthKOマウスで抑制された。病理組織での葉酸誘発性腎障害の程度ならびに腎障害マーカーKIM-1、LCN-2の遺伝子発現の増加はKOマウスで軽度だった。炎症性サイトカインマーカーTNF-α、MCP-1、IL-6の遺伝子発現の増加はKOマウスで抑制された。マクロファージマーカーCD68の遺伝子発現の増加はKOマウスで抑制された。酸化ストレスマーカー4-HNEのタンパク発現の増加はKOマウスで軽減された。
【結論】マクロファージ鉄ストレスは葉酸誘発性AKIに関与することが示唆された。