【背景】現在、世界で8憶4,000万人以上が罹患していると推定されている慢性腎臓病 (CKD)は進行すれば日常生活が妨げられる腎性貧血に、さらに血液透析、腹膜透析や腎移植が必要な末期腎不全に至る。また、心血管疾患による死亡リスクも増加する。しかしながら現時点ではCKDに対する治療法は存在しないため、CKDを惹起・進展させないことが重要であり、予防法の開発は喫緊の課題である。核内受容体であるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)は、脂質代謝において中心的役割を担うが、その欠損は腎線維化を悪化させることが報告されている。PPARαアゴニストであるフィブラート系薬剤は脂質異常症治療薬であるが、CKD患者への使用の際は腎機能低下に伴う有害事象リスクの増大に注意が必要である。一方、選択的PPARαモジュレーター(SPPARMα)であるペマフィブラートは従来のフィブラート系薬剤と異なり、PPARαに対して高い選択性をもち低用量から活性化する胆汁排泄型の薬剤であるため、CKDにおいて効果が期待できる。そこで、本研究ではCKDにおけるペマフィブラートの腎保護効果を動物実験で検討した。
【方法】片側尿管結紮誘導腎線維化モデルマウス(UUOマウス)とアデニン誘導CKDモデルマウス(CKDマウス)にペマフィブラートを連日経口投与し、腎保護効果を検討した。
【結果】まず、UUOマウスにおいてペマフィブラートの腎保護効果を検討した。ペマフィブラート投与は、UUOマウス腎臓において増加した炎症性サイトカイン、細胞外マトリックス関連遺伝子発現の増加を抑制した。UUOマウスにおいてペマフィブラートによる腎保護効果が確認されたため、次にCKDマウスを用いて検討を行った。ペマフィブラート投与によりCKDマウスにおけるクレアチニンの増加や貧血は抑制され、腎線維化も抑制された。さらに、ペマフィブラート投与によりCKDマウス腎臓における炎症性サイトカイン遺伝子発現の増加も抑制された。
【結論】ペマフィブラート投与によりCKDマウスにおける腎機能低下、貧血、腎線維化、腎臓における炎症の抑制などが認められたことから、ペマフィブラートのCKDに対する腎保護効果が示唆された。