新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が重症化するとICUで人工呼吸やECMOを含む集中治療が行われる。重症COVID-19に対して、日本では諸外国と比べて高い救命率を維持できたものの、一時期、医療崩壊と呼ばれる現象が生じた。感染患者のICUにおける長期予後(生・死)に加え、短期予後、すなわち、入院中のある時点からn日後に、悪化するか、回復するかといった重症度の変遷の予測は、重症化の予防、さらに重症者向け医療提供体制の整備に有用であると思われる。今回われわれは、ICUに入院したCOVID-19患者、1,794例の複数時点の診療情報をもとに、長期予測モデルとして、入院時の診療情報から退院時の生死を予測、短期予測モデルとして、入院中のある時点での診療情報から、3,5,7日後の重症度の変遷を予測する機械学習モデルを作成した。入力情報として、患者基本情報(年齢、性別、基礎疾患など)、投与薬物、呼吸管理法(酸素投与、人工呼吸、ECMOなど)、血液検査値、血液ガス値、生化学的検査値(電解質、腎機能、肝機能、凝固機能、炎症マーカー)、臓器不全スコア、重症度スコアなどの診療情報を用いて、入力データの生成、データ分割、GridSearch によるパラメータ探索、 RF, XGBoost, SVC の3種類の推定器によるモデリング、次いで、ROC curve, PR curveなどによる検証を行った。その結果、長期予測については、 クラスバランスを考慮したランダムフォレストモデルによって高い精度で生命予後を予測するモデルを構築することができた。短期予測については、悪化の可能性について、5日後に人工呼吸あるいはECMOが必要になるほどに悪化することを予測するモデルを、回復の可能性について、5日後、7日後に、酸素投与が不要となる、人工呼吸やECMOから離脱できるほどに回復することを予測するモデルを構築することができた。今後、開発したAIモデルのICU診療現場での実装を目指したいと考えている。