【背景】薬効評価におけるin-vitro実験データとin-vivo評価との関連付けは、最終目的である臨床適用の成否につながる重要なステップと考える。我々は血小板凝集実験においてin-vitro(あるいはex-vivo)薬効評価を報告してきたが、より実践的検討として血栓動物モデルを用いた閉塞時間を測定した。評価対象としては古典的ペントバルビタール麻酔と、三種混合麻酔とを比較した。【方法】ICR系マウス6ヶ月齢オスを用い、ペントバルビタール麻酔は80mg/kg-i.p.[PENT群]、3種混合麻酔はメデトミジン0.75mg/kg+ミダゾラム4mg/kg+ブトルファノール5mg/kg[i.p.、MMB群]にて行った。鼠径部を切開して大腿動脈を露出し、超音波血流計DVM-4500(Hadeco社製)を用いて血流をモニタしつつ、濾紙ディスクに浸み込ませた塩化鉄10%溶液を乗せて血管外から5分間作用させ、血流変化を記録した。反応開始から血流完全停止までに要した時間を閉塞時間として測定、30分以上閉塞が無い場合は上限の30分を測定値とした。【結果】PENT麻酔動物においては閉塞時間平均値が13.6±1.3分であり、アスピリン100mg/kg-p.o.投与はこれを25.1±4.9分と延長した(n=3、P=0.06;positive control)。次いで麻酔薬を変更して比較したところ、PENT群22.8±4.0分であったのに対しMMB群13.6±0.8分と短縮傾向を示した(n=5、P=0.08)。【考察】我々が以前報告したデータでは、ペントバルビタール麻酔下で37.2 ± 7.7%であったin-vitro凝集率がMMB麻酔により86.6 ± 2.9%と有意に増強しており(第93回年会、2020年3月横浜→web開催;n=5、コラーゲン0.8µg/mL刺激)、今回の閉塞時間短縮はこの血小板凝集亢進を反映した可能性が考えられた。