【目的】骨代謝制御機構の解明は重要な研究課題となっており、様々な研究が報告されている。グルコシルセラミド合成酵素(GCS)はスフィンゴ糖脂質であるガングリオ系およびグロボ系糖脂質の発現に必須である。スフィンゴ糖脂質が骨代謝に関与していることは報告されているが、GCSの骨芽細胞増殖における役割についてはほとんど明らかになっていない。そこで、本研究では、GCSを阻害することで、その骨芽細胞増殖への関与について検討した。【試料および方法】マウス骨芽細胞株(MC3T3-E1)にGCS阻害剤(Miglustat、D-PDMP、D-PPMP)を添加し、フローサイトメトリーを用いてGD1aおよびGb4の発現レベルを検討した。また、スフィンゴ糖脂質により制御される分子を同定するため、GCS阻害剤処理群と未処理群の細胞よりRNAを抽出し、マイクロアレイ解析を行った。その後、マイクロアレイで予測された遺伝子をリアルタイムPCRにて確認した。【結果および考察】GCS阻害剤によりGD1aおよびGb4の発現が低下し、細胞増殖も有意に抑制された。また、マイクロアレイ解析によりGCS阻害剤(スフィンゴ糖脂質の低下を引き起こす)で、発現が上昇する10遺伝子および低下する9遺伝子が候補として絞られた。また、それらの遺伝子をリアルタイムPCRにて確認した結果、GCS阻害剤で抑制されると予測された9つの遺伝子のうち、Fndc1、Igfbp5、Cox6a2、Cth、Angptl6のmRNA発現量は、3種類すべての阻害剤によって抑制された。また、Fndc1、Cox6a2、Cth、Angptl6のmRNAの発現量は、成熟な骨芽細胞への分化誘導に伴い抑制された。今後は、骨芽細胞の増殖におけるAngptl6、Cox6a2、Cth、Fndclの関与を検討するために、siRNAによるノックダウン実験を行いたいと考えている。【結論】本研究により、GCSはマウス骨芽細胞増殖の促進に関与することが明らかになった。