【目的】脳腫瘍関連てんかんにおいては脳腫瘍の治療が優先され、てんかん治療に焦点が当たる機会は世界的に見ても少ない。患者のQOLを維持し重積状態を防ぐため、てんかん発症をできる限り抑えることが望まれるが、既存のAEDでは顕著な有効性は認められていない。脳腫瘍てんかんモデル動物は、発作誘発が難しいなど実験上の問題点も多く研究が進んでいない。本研究では、脳腫瘍細胞移植後マウスとレベチラセタム投与マウスにおいてGABAA受容体抑制誘発けいれん発作発症感受性を指標に検討し比較した。
【方法】C3H/HeN雄性マウス(8~10週齢、クレア)にRSV-M mouse glioma cells (RSV-M-TS、100,000 cells/2µl)を脳定位手術で大脳皮質(左頭頂葉、)内に移植を行った。脳腫瘍移植後3~5週間後にMRI撮像し脳腫瘍移植状態を観察した。その後、前頭葉/頭頂葉に慢性脳波ビス電極を留置した。脳腫瘍移植後けいれん後のGABAA受容体抑制誘発けいれん発症閾値(感受性)を検討するため、GABAA受容体遮断薬ペンチレンテトラゾール(PTZ)の低用量(30 mg)投与後ビデオ脳波測定を行い脳波と行動の計測・観察した。また、PTZ誘発発作に対するレベチラセタム(LEV)の効果も検討した。LEVは給水瓶に5 mg/mLの濃度で溶解し14日間自由飲水後、PTZ誘発発作を検討した。
【結果・考察】未処置群、偽移植群のマウスでは、PTZ 30 mg/kg投与ではけいれん発作は出現しない。しかし、脳腫瘍マウスではミオクローヌス、間代性けいれん発作が出現した。つまり、脳腫瘍マウスでは脳内けいれん発作閾値の低下(PTZ感受性上昇)が認められた。この結果より、脳腫瘍移植後脳腫瘍細胞増殖に伴いGABAA受容体関連発作準備状態が形成されている可能性が示唆された。またLEV投与では、脳波におけるPTZ誘発波は抑制されなかったが、実際のけいれん発作は抑制された。この結果よりLEVによって行動におけるGABAA受容体抑制誘発けいれん発作閾値が上昇したと言える。現在、LEVを脳腫瘍によりGABAA受容体抑制誘発けいれん発作閾値が低下したマウスに長期投与しその効果を検討中である。