空気の振動である音は、哺乳類の鼓膜・耳小骨を介して、渦巻き型の末梢受容器「内耳蝸牛」に機械的刺激として入力される。この臓器内部のシート様組織である「感覚上皮帯」は、渦の底から頂上にかけてその厚さ・幅・硬さが単調に変化し、この物理的な性質の差を利用して場所ごとに周波数を選り分け、ナノ振動する。この微小な動きは、上皮上に分布するセンサー細胞の動作によって、小さな音ほどよりよく増幅される。内耳は、多種多様な細胞が絡み合って複雑な構造体を形成しており、この増幅機構の詳細はまだ十分に理解されていない。しかしながら、わずかな侵襲であっても臓器機能が損なわれてしまうため、分析が困難であった。そこで2006年から、光断層撮像法を応用したin vivo形態解析、さらに同手法による感覚上皮帯のナノ振動計測が実施されてきた。しかしながら、麻酔下の生きた動物における計測においては、光エコーのスキャン中に拍動や自発呼吸による動きノイズが混入しやすく、積算して得られる断層画像にはしばしばそれらに由来した解像度の低下が確認される。そこで本研究では、サンプル上における単位時間あたりの反射光量を高め、1回あたり10 ms未満の高速スキャンによる撮像を実施した。さらに連続した2枚のイメージペアを複数用意し、それらを画像鮮明化に特化した機械学習モデルに適用したところ、シングルショット画像から背景ノイズが除去された。本手法の活用により、動きノイズの影響を受けにくい鮮明な形態的解析が今後可能となると考えられる。