細胞膜上に存在する小さな不動性の突起である一次線毛(Primary cilia)は細胞内外のシグナル伝達に働き、その構造形成やシグナル伝達の機能に関する遺伝子の異常は線毛病と呼ばれる一連の疾患を引き起こすことが知られている。一次線毛の形成制御に関わる遺伝子の一つであるトリコプレイン(TCHP)は一次線毛基部の基底小体に局在し、オーロラAキナーゼの活性化を介して一次線毛形成の抑制因子として機能する。このTCHPを介した一次線毛の形成制御については、細胞周期進行や間葉系幹細胞の分化に関わることが明らかになっているが、その詳細な分子メカニズムについては未だ不明な点が多い。そこで本研究ではTCHPノックアウトゼブラフィッシュを作成し、組織レベルにおけるTCHPの機能を調べるとともに、プロテオーム解析による網羅的な一次線毛シグナル伝達関連因子の同定を試みた。作成したTCHPノックアウトゼブラフィッシュは、ヒレ組織の損傷再生実験において、野生型よりも高い再生能力を示した。また、再生中のヒレ組織を用いた定量的プロテオーム解析では8756のタンパク質が同定され、ノックアウトと野生型の間で発現変動があるものとして、186タンパク質が同定された。また、これらプロテオームデータを用いたオントロジー解析では、細胞増殖や分化に関わる遺伝子とともに、新たなシグナル分子の関与も示唆された。本発表では、同定された新規一次線毛シグナル関連分子のゼブラフィッシュを用いた機能解析について報告する。