脂質修飾の一つであるパルミトイル化修飾はパルミチン酸がタンパク質のシステイン残基のチオール基に付加される可逆的な翻訳後修飾で、修飾を受けたタンパク質は疎水性が上昇し、細胞膜や細胞内小器官膜への親和性が上がる。これまでに2000以上のタンパク質がこの修飾を受けることが知られており、この修飾機構の破綻は神経疾患や免疫疾患、加えて、様々ながんと関連することが報告されている。パルミトイル化修飾の責任酵素であるDHHCタンパク質は、ヒトでは23種同定されている。DHHCタンパク質群は、細胞内でパルミトイル-CoAを用いて、活性中心部位に存在するシステイン残基を自己パルミトイル化し、続いて基質タンパク質のシステイン残基にパルミトイル基を転移する。DHHC酵素の活性状態は、自己パルミトイル化されたDHHC酵素を検出することでモニターできるが、これまでの手法では膜貫通タンパク質であるDHHC酵素を多量に精製する必要があったことから、DHHC酵素の大半で未解析のままであった。
今回我々は、自己パルミトイル化DHHC酵素を簡便に短時間で、更に、低コストに検出する手法を開発した。本研究によりDHHC酵素の活性は様々な翻訳後修飾により制御され、活性状態には酵素間で大きな違いがあることが判明した。加えて、がん患者より同定されたDHHC酵素の変異をスクリーニングしたところ、自己パルミトイル化能が大きく低下し、不活性化された変異DHHC酵素を発見した。本手法により、パルミトイル化修飾酵素DHHCタンパク質の機能解析が大きく前進し、パルミトイル化修飾が関与する様々な病因の解明が期待できる。