【目的】変形性関節症 (Osteoarthritis: OA) は関節全体に退行性変性が生じる疾患である。これまでに、OAの発症・病態進展には細胞老化および糖鎖修飾がそれぞれ関与していることが報告されているが、両者の相互関係は明らかになっていない。本研究では、OAの発症・進展における細胞老化と糖鎖修飾の関連を明らかにするため、OA患者のsingle-cell RNA-seq データセットを用いたバイオインフォマティクス解析を実施した。
【方法】異なる2種類のOA患者のsingle-cell RNA-seq データセットを用いて解析を行った。患者の軟骨細胞におけるgene set enrichment analysisにより、OAの重症度とOA病態関連シグナルの相関を検証した。また、細胞老化と糖鎖修飾の相関を検討した。次に、軟骨細胞における糖鎖関連遺伝子の発現解析を行った。さらに、発現解析で同定されたPolypeptide N-acetylgalactosaminyltransferase (GALNT) 遺伝子の発現量とOA病態関連シグナルおよび細胞老化との相関を検討した。
【結果】Osteoarthritis Research Society Internationalスコアにおける重症度が高いOA患者の軟骨細胞では、OA病態関連シグナルが亢進していた。さらに、細胞老化と糖鎖修飾には正の相関があり、特にO結合型糖鎖修飾との相関が強いことが示された。2種類のデータセットの軟骨細胞では、共通して7種類のO結合型糖鎖関連遺伝子が発現上昇し、そのうち5種類はGALNT遺伝子であった。さらに、GALNT遺伝子が高発現している軟骨細胞では、OA病態関連シグナル及び細胞老化が亢進していることが示された。
【考察】本研究により、OA病態下の軟骨細胞において、細胞老化と糖鎖修飾は関連している可能性が示唆された。O結合型糖鎖修飾を担うGALNT遺伝子がOAの新規治療標的となることが期待される。