【背景】糖尿病に伴う様々な臓器合併症は患者のQOLを悪化させ予後不良となる。糖尿病合併心不全は糖尿病性心筋症とも呼ばれ、心臓リモデリングに伴う心不全と定義され、特異的治療法はないのが現状である。五苓散は、体液恒常性調節障害の改善に加え、糖尿病が適応症として認められている漢方薬であるが、糖尿病臓器合併症への効果は未知である。本研究では、短期間で作成できる糖尿病合併心不全モデルマウスを確立し、糖尿病合併心不全に対する五苓散の効果について検討した。
【方法】C57BL6/N系統マウス(8週齢, 雄性)に、高脂肪食とL-NAME(0.1%)を9週間与え、5週目にSTZ(50㎎/kg/day)を5日間連続腹腔内投与することで糖尿病合併心不全モデルを作成した。非糖尿病群、糖尿病合併心不全(D-HF)群、糖尿病(DM)群、L-NAME群の4群で比較検討した。五苓散(Go)は初週から1g/kg/dayを連日経口投与し、他群には等量の滅菌水を投与した。非糖尿病群、糖尿病合併心不全(D-HF)群、糖尿病合併心不全(D-HF)+Go 群の3群で比較検討した。
【結果】D-HF群は、DM群、L-NAME群と比べて、心筋細胞肥大、線維化がみられたことより、モデルとして適当であると確認した。空腹時血糖は、非糖尿病群と比較してD-HF群とD-HF+Go群で高値であったが、両者に差はみられなかった。心エコーでは、D-HF群における左室内径短縮率の低下は、D-HF+Go群では抑制された。D-HF群でみられた心体重比の増加も、D-HF+Go群では抑制された。D-HF群における病理組織での心筋細胞肥大と心肥大関連遺伝子(Nppa, Nppb)発現増加は、D-HF+Go群で抑制された。D-HF群におけるアポトーシス関連タンパク質(Cleaved Caspase-3)発現の亢進とAktリン酸化の減少は、D-HF+Go群で抑制された。D-HF群におけるPSR染色での間質線維化亢進と線維化関連遺伝子(Col1)発現上昇、線維芽細胞活性化指標タンパク質(αSMA)と脂質過酸化(4-HNE)の増加は、D-HF+Go群で抑制された。一方で、炎症関連遺伝子(Tnfa, Il1b)の発現はD-HF群とD-HF+Go群で増加したが、差は認めなかった。
【結論】五苓散は糖尿病合併心不全に対する新たな治療薬となることが示唆された。