【目的】
軟骨無形成症(Achondroplasia: ACH)は、四肢短縮型低身長症を呈する難治性骨系統疾患である。ACHは線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3: fibroblast growth factor receptor 3)の変異によってFGFR3シグナル伝達が亢進している。FGFR3シグナルの下流には、signal transducer and activator of transcription (STAT)シグナル伝達経路などが存在する。転写関連CDKファミリーに属するサイクリン依存性キナーゼ8(CDK8)は、生存、分化および増殖を含む基本的な細胞プロセスの制御に重要な役割を果たすことが報告されている。しかし、ACHの進行におけるCDK8の機能的役割とそのメカニズムは未だ解明されていない。本研究では、in vitro及びin vivo実験により、ACHに対するCDK8阻害剤KY-065の有効性を検討した。
【方法】
Col2a1プロモーター下流にFgfr3G380R変異をもつ遺伝子改変マウスをACHモデルとして使用した。ACHモデルマウス由来の軟骨細胞をKY-065存在下で培養した。軟骨細胞分化能を評価するため、アルシアンブルー染色、アルカリホスファターゼ(ALP)染色、リアルタイムqPCRおよびウェスタンブロッティングを行った。KY-065をACHモデルマウスに生後3日目から28日間連続で皮下投与した。その後、µCT解析と組織学的解析を行った。
【結果】
KY-065処理したACHモデルマウスの軟骨細胞では、アルシアンブルー染色とALP染色の染色性が増強し、軟骨細胞分化マーカーのmRNA発現レベルが有意に増加した。また、KY-065添加は、Erk1/2のリン酸化には影響を与えなかったが、STAT1Ser727のリン酸化を選択的に低下させた。KY-065の連日投与はACHモデルマウスの大腿骨長を有意に伸長させ、大腿骨遠位部の成長板軟骨の厚さと肥大化面積の両方を有意に増加させた。
【考察】
本研究により、CDK8阻害剤KY-065がACHモデルマウスの軟骨細胞の機能を亢進させるとともに長管骨を伸長させることが示された。軟骨細胞におけるCDK8-STAT1Ser727軸がACHの潜在的治療標的であり、CDK8阻害剤がACHの有望な治療薬候補となる可能性が明らかになった。