目的: 骨肉腫は、骨組織を原発巣とする希少がんであり、外科手術や化学療法を組み合わせた治療が行われている。しかし、約40年間治療成績の顕著な改善が認められていない。その原因の1つとして骨肉腫幹細胞 (Osteosarcoma stem cell: OSC) の存在が挙げられる。OSCは、幹細胞性と治療抵抗性を有し、治療後も残存したOSCが自己複製や多系統分化を行うことで骨肉腫が再び産生され、再発・転移が引き起こされると考えられている。したがって、骨肉腫根治のためOSCを標的とした新規治療法の開発が希求されている。Pyruvate dehydrogenase kinase 1 (PDK1) は解糖系関連因子であり、乳がん幹細胞において高発現し、幹細胞性を制御するという報告がある。しかし、OSCにおけるPDK1の機能については明らかではない。本研究では、in vitro実験により、OSCにおけるPDK1の機能的解析を行った。
方法: ヒト骨肉腫細胞株143B及びMG63の2種類の細胞株を用いた。各々の細胞にshort hairpin RNAを用い、PDK1をノックダウンさせた143B細胞及びMG63細胞を作製した。PDK1がOSCに及ぼす影響を検討するために、自己複製能を評価するSphere formation assay、増殖能を評価するMTT assay、細胞死を評価するApoptosis assayを行った。
結果: 143B細胞とMG63細胞の両方において、PDK1ノックダウン群では、コントロール群と比較して、Sphere数の減少、増殖能の低下、Apoptosisの上昇が認められた。
考察: PDK1はOSCにおいて、自己複製能、増殖能、細胞死を制御している可能性が示唆された。骨肉腫の根治を目的とした治療法の開発を目指す上で、PDK1が新規治療標的因子となりうることが期待される。