【目的】来るべき宇宙時代へ向けて、長期の宇宙滞在により引き起こされる生体恒常性変化についての研究がすすめられている。宇宙環境では筋量・骨量減少に加えて、貧血が生じることも知られており、生体内鉄分布に影響すると考えられる。そのため、宇宙における鉄の至適摂取量は重要課題であるが、そのエビデンスは乏しく、消化管鉄吸収機構の解明が望まれる。しかし、消化管鉄吸収機構については未解明である。本研究では低重力下で飼育されたマウスを用いて消化管と骨髄における鉄動態を検討した。
【方法】JAXA「きぼう」利用マウスサンプルシェアで提供されたマウス消化管と胸骨を使用した。C57BL/6雄マウスを、宇宙で小型遠心機を用いた人工重力1/6Gで飼育した群と、対照として地球重力1Gで飼育した群を比較・検討した。
【結果】十二指腸におけるPerls/DAB染色では、1G飼育群と比較して1/6G飼育群での染色性は減弱していた。FTH、DMT1の免疫組織化学でも1/6G飼育群での染色性が減弱していた。加えて、F4/80によるマクロファージ評価では1/6G飼育群で絨毛内マクロファージ数は減少し、一方、杯細胞数は増加していた。胸骨骨髄の検討では、Perls/DAB染色とFTH免疫組織化学ともに1/6G飼育群で染色性の減弱を認めた。
【結論】低重力下では十二指腸・骨髄の鉄量が減少していることが示唆された。