【背景・目的】CCR6は、制御性T細胞(Treg)、Th17細胞およびγδT細胞に選択的に発現しているケモカイン受容体である。CCL20をリガンドとし、これらの細胞の遊走を介して、種々の病態の制御に寄与する。劇症肝炎は、急速かつ大規模な肝細胞の壊死が生じ、極めて死亡率が高い疾患である。これまでに、慢性肝炎患者の急性増悪時や劇症肝炎モデルマウスにおいて、CCR6やCCL20の発現が増加することが報告されている。しかしながら、CCR6-CCL20系の病態学的な意義は未だ明らかとなっていない。当研究室では、劇症肝炎におけるCCR6-CCL20系の役割を研究しており、劇症肝炎モデルマウスの肝臓においてCCL20が増加すること、CCR6欠損マウスでは、野生型マウスと比べ、血清ALT値および死亡率が減少することをこれまでに見出している。しかしながら、CCR6欠損マウスでみられた病態の変化の詳細については不明である。本研究では、CCR6-CCL20系を介した肝臓への免疫細胞の遊走制御機構の解明を行った。
【方法】実験には、オスのC57BL/6Nマウスを用いた。劇症肝炎病態は、D-galactosamine(300 mg/kg)およびLPS(1 μg/kg)を腹腔内投与することで誘導した。投与6時間後にサンプルを回収し、免疫細胞の浸潤はフローサイトメトリー法にて、サイトカインの発現はELISA法にて解析した。
【結果・考察】CCR6欠損マウス肝臓では、Tregの浸潤に変化はなかった。一方、Th17細胞およびγδT細胞の浸潤がCCR6欠損マウスで減少した。また特に、γδT細胞は、IL-17Aを産生するサブセットの浸潤が減少していた。さらに、これらの細胞より産生される主要なサイトカインであるIL-17Aの発現量が、CCR6欠損マウス肝臓において顕著に減少した。最後に、抗IL-17A抗体の投与は、劇症肝炎モデルマウスの死亡率を減少させた。以上の結果は、CCR6がIL-17A産生細胞の肝臓への遊走を制御し、劇症肝炎病態を制御する可能性を示すものである。また、CCR6は劇症肝炎の有望な新規治療標的分子となることが示唆される。