イソニアジドは結核治療の第一選択薬である。しかし、イソニアジドは重篤な肝細胞障害や急性肝不全を引き起こしうる。 現状ではイソニアジド誘発性肝障害を予防できる、レベルの高いエビデンスの得られた治療法は確立されていない。本研究では、さまざまなマウス系統におけるイソニアジド感受性の違いを解析した公共トランスクリプトームデータを起点として、イソニアジド誘発性肝障害を軽減する併用薬の探索を試みた。まず、イソニアジド誘発性肝障害を起こしやすい3系統のマウスに共通する発現変動遺伝子(イソニアジド誘発性肝障害の遺伝子発現シグネチャー)を同定した。この遺伝子発現シグネチャーを逆向きに変化させる薬物をConnectivity Mapを用いて同定した。また、ヒト有害事象自発報告データベースを用いて、イソニアジド服用患者における肝障害の報告オッズ比を低下させる併用薬を同定した。13種類の薬物が共通して同定され、その中にランソプラゾールが含まれていた。ゼブラフィッシュを用いて、イソニアジドによる肝細胞アポトーシスをランソプラゾールが抑制すること、イソニアジドによる小胞体ストレスや炎症をランソプラゾールが軽減する可能性を明らかにした。さらに、三重大学病院の電子カルテ情報を用いて、イソニアジドを投与された患者における肝機能をランソプラゾール内服群と非内服群で比較したところ、ランソプラゾール内服群の肝障害マーカー(AST, ALT)が非内服群に比べて有意に低いことを見出した。これらの結果は、ランソプラゾールがイソニアジド誘発性肝障害を軽減することを示唆している。本研究手法は、他の薬物性肝障害に対する治療薬の探索にも活用できると考えられる。