[目的] IL-1bは、他の炎症性メディエーターの産生誘発にも関与する重要な炎症性サイトカインである。以前の研究で、唾液抗菌ペプチドの一種であるb-ディフェンシン3がジンジバリス菌LPSにより活性化したミクログリアにおけて遅発性に誘導されるIL-6ならびに一酸化窒素の産生を有意に抑制することを報告した(Inoue et al., In J Mol Sci. 23, 15099, 2022)。そこで本研究では、b-ディフェンシン3のジンジバリス菌LPS刺激によるミクログリアにおけるIL-1b産生に及ぼす作用を解析した。
[方法・結果](1)NanoLucルシフェラーゼ遺伝子とCL1-PEST分解シグナル配列をIL-1bプロペプチド領域を介して結合した融合遺伝子をIL-1b遺伝子プロモーター下流に連結したBV-2ミクログリアを用い、成熟型IL-1bのレポーターアッセイを行なった。その結果、ジンジバリス菌LPS刺激によるIL-1b産生は、Toll様受容体2(TLR2)阻害薬C29ならにIkBキナーゼ阻害薬wedelolactoneにより有意に抑制された。一方、NLRP3インフラマソーム阻害薬MCC950の影響は受けなかった。(2)b-ディフェンシン3ならびにCA-074Meは、ジンジバリス菌LPS刺激によるIL-1b産生を有意に抑制した。一方、カテプシンB特異的阻害薬ZRLRならびにレンチウイルスshRNA導入によるカテプシンBノックダウンは、影響を及ぼさなかった。(3)b-ディフェンシン3ならびにCA-074Meは、ジンジバリス菌LPS刺激に伴うNF-kB p65核移行ならびにIkBa分解を有意に抑制した。(4)タンパク質構造解析ソフトAlphaFold2を用い、b-ディフェンシン3とカテプシンBならびにLとの結合様式を解析した。その結果、b-ディフェンシン3はカテプシンBの活性部位と強固に結合することが予測されたが、カテプシンLの活性部位との結合は比較的弱いことが予測された。
[考 察] カテプシンBならびにLは、ジンジバリス菌LPS刺激によるミクログリアにおけるプロ型IL-1b産生に関与することが示唆された。 b-ディフェンシン3は、カテプシンBならびにLの酵素活性を阻害することでジンジバリス菌LPS により誘導されるIL-1b産生を抑制することが明らかになった。今後、プロ型IL-1bの成熟型へのプロセッシングにおけるカテプシンBならびにLの関与、さらに b-ディフェンシン3の抑制作用について検討したい。