【背景・目的】
血管内皮障害は慢性腎臓病(CKD)における心腎症候群の主要な悪化因子であることが知られている。我々は、CKDモデルであるアデニン腎障害ラットの血管機能障害には尿毒素であるインドキシル硫酸(IS)の血中濃度増加が密接に関与することを報告した。ISによる血管機能障害メカニズムを解析する目的で、同ラットに抗酸化薬を処置したところ、血管機能障害の改善がみられたが、 IS 濃度上昇も抑制された。このことから 酸化ストレスがIS産生に関与している可能性が考えられた。さらにIS産生に対する酸化ストレスの関与を、S9mixを用いて検討する中で、一酸化窒素(NO)がIS産生を強く抑制することを発見した。そこで本研究では、NOがアデニン腎障害ラットのIS産生および血管機能におよぼす影響を検討することを目的とした。
【方法】
アデニン腎障害ラットはSDラットに0.75%アデニン食を4週間摂餌させることにより作製した。アデニン摂餌2週間後にNO供与体として亜硝酸塩を30 mg, 100 mg/Lとなるよう飲水投与した。アデニン摂取4週後に麻酔下で右大腿動静脈にカテーテルをそれぞれ挿入し、血圧の測定および薬物の投与を行った。無処置および各種処置薬存在下におけるアデニン食群と亜硝酸塩処置群のアセチルコリン(ACh)およびニトロプルシドナトリウム(SNP)による血圧下降を比較することで血管内皮および平滑筋機能について解析した。また2週間ごとに採血採尿を行い、得られた血液・尿より各種腎機能パラメータを測定した。
【結果】
亜硝酸塩100 mg/L処置によりアデニン腎障害ラットにおける血中インドキシル硫酸濃度の増加は抑制された。アデニン食群および亜硝酸塩群においてNO合成阻害薬であるニトロアルギニン(L-NA)処置によりAChの血圧下降は変化しなかった。COX阻害薬とL-NA処置下におけるAChによる血圧下降はアデニン食と比較して亜硝酸塩処置群では増加する傾向がみられた。アデニン食と比較して亜硝酸塩100 mg/L処置群ではSNPによる血圧下降は有意に増大した。
【結論】
亜硝酸塩はアデニン腎障害ラットでみられたIS産生増加を抑制することで、障害された血管内皮由来過分極(EDH)ならびに血管平滑筋機能を改善すると考えられた。