【研究背景】
リゼルギン酸ジエチルアミド(LSD)やシロシビン、±2,5-dimethoxy-4-iodoamphetamine hydrochloride (DOI) などの幻覚薬は、使用者に一時的な幸福感をもたらすとともに、幻覚体験を引き起こす。これら幻覚薬により、視覚野や聴覚野、体性感覚野などの大脳皮質の神経活動が促進されることから、大脳皮質の活動異常が幻覚の原因である可能性が考えられている。しかし、大脳皮質のどの領域の活動異常が幻覚体験に必要であるかどうかは明らかにはなっていない。本研究では、メゾスケールの大脳皮質カルシウムイメージング法と、薬理遺伝学的手法を用いた行動薬理学解析を実施することで、幻覚の分子基盤の理解を深めることを目的とした。
【方法】
カルシウムセンサータンパク質 GCaMP6f を大脳皮質に広範に発現する Emx-Cre/Ai95 ダブルトランスジェニックマウスにDOI を腹腔内投与し、大脳皮質のカルシウム応答の変化を観察した。また、薬理遺伝学的手法により、DOIにより惹起されるマウスの首振り応答に聴覚野の神経活動が与える影響を解析した。
【結果・考察】
DOIの投与により、運動野や聴覚野、体性感覚野と他の皮質領域の神経結合性が増加することを見出した。また、聴覚野の薬理遺伝学的抑制は、DOIにより惹起されるマウスの首振り応答を有意に抑制した。これらの結果から、マウスの幻覚様行動において聴覚野が重要な役割を果たしている可能性が示された。今後、より詳細な行動薬理学解析・神経生理学解析を実施することで、幻覚体験における聴覚野の役割が詳細に明らかになり、本研究成果が幻覚の神経基盤の理解が深まることが期待される。