[目的] 肥満、糖尿病そして睡眠障害は、関連した一連の病態と捉えられる。睡眠・覚醒、摂食行動に関与するオレキシン神経系は、空腹時に活性化して、覚醒状態を維持し、摂食行動を促す役割を担う。我々は、糖尿病ラットにおいてオレキシンの血漿中濃度が上昇することを報告している。今回、肥満・2型糖尿病モデルであるOtsuka Long-Evans Tokushima Fatty (OLETF)ラットの脳内におけるオレキシン受容体発現の変動について検討した。
[方法] 5週齢のOLETFラットと対照群であるLong-Evans Tokushima Otsuka(LETO)ラットを38週齢まで飼育観察し、収縮期血圧の測定はテイルカフ法により行った。肥満の指標として、体重および内臓脂肪の重量を測定した。OLETFラットとLETOラットは麻酔下にて採血を行い、空腹時血糖値を測定、その後、脳組織を摘出した。オレキシン血漿中濃度はELISA法により測定し、脳組織からはRNA抽出を行った。肥満・糖尿病ラットの脳内におけるオレキシン受容体発現は、PCR法とアガロースゲル電気泳動法により検討した。
[結果および考察] 38週齢のOLETFラットでは、対照群のLETOラットと比較して、体重、内臓脂肪、収縮期血圧および空腹時血糖値の顕著な上昇がみられたことから、肥満ならびに糖尿病状態であると考えられる。肥満を伴う糖尿病モデルであるOLETFラットにおいて、摂食、睡眠、覚醒を制御する神経ペプチドであるオレキシンAの血漿中濃度が上昇する結果が得られた。OLETFラットでは、LETOラットと比較して、脳組織内におけるオレキシン1型受容体発現の上昇がみられた。不眠症治療薬としてオレキシン受容体拮抗薬が臨床的有用性を発揮していることを考え合わせると、OLETFラットはオレキシンの上昇による覚醒が持続し、脳内におけるオレキシン受容体発現の変動は、睡眠障害のみならず肥満を伴う糖尿病の病態に関与する可能性が考えられる。