内向き整流性カリウム4.1(Kir4.1)チャネルはアストロサイトに発現し、うつ病やアルツハイマー病など様々な疾患の発症・進行に関与することが報告されている(Int. Mol. Sci., 22, 10236, 2021)。また、神経疾患に共通する重要な因子として知られる神経炎症においてアストロサイトの役割が注目されている(Nat. Rev. Neurol., 19, 395, 2023)。本研究では、神経炎症におけるKir4.1チャネルの機能を明らかにするため、lipopolysaccharide(LPS)による神経炎症性の認知機能障害に対するKir4.1チャネル阻害薬の作用を評価した。
実験にはBALB/c系雄性マウスを使用し、LPS(0.4 mg/kg, i.p.)を7日間(Day1~7)反復投与した。Kir4.1チャネル阻害薬としてはquinacrine(10, 30 mg/kg, s.c.)およびVU0134992(3, 10 mg/kg, s.c.)を用い、LPS投与の30分前に7日間投与した。行動薬理学的評価として、反復投与終了後(Day8, 9)に新奇物体認識(NOR)試験を行った。また、行動試験後(Day10)に脳を摘出し、免疫染色によってGFAPおよびNeuNの発現解析を行った。さらに、LPSおよびquinacrine(30 mg/kg, s.c.)を3日間反復投与した際のGFAP発現も同様に免疫染色により評価した。
NOR試験においてLPSの反復投与は認知機能の有意な低下を示し、quinacrine(30 mg/kg, s.c.)およびVU0134992(3 mg/kg, s.c.)ともにLPSによる認知機能障害を有意に改善した。また、免疫染色においてLPSの3日間および7日間の反復投与は海馬領域におけるGFAP発現を有意に増加させた。一方で、quinacrine(30 mg/kg, s.c.)およびVU0134992(3 mg/kg, s.c.)はともに、LPSによるGFAP発現の上昇を有意に抑制した。さらに、両薬物はLPSの7日間反復投与によるNeuN免疫応答性の有意な低下に対して、改善傾向を示した。以上のことから、Kir4.1チャネルの阻害はLPSによるアストロサイト活性化の抑制および神経傷害を軽減し、神経炎症性の認知機能障害を改善することが示唆された。