[目的]アストロサイトは、空間的K⁺緩衝機構による細胞外K⁺濃度調節、シナプス部の神経伝達物質の取り込み、グリオトランスミッターの遊離などを介して神経興奮を制御している。また、アストロサイトの機能異常はてんかん発作の発症制御に関与していることが知られている。本研究では、アストロサイト選択的抑制剤フルオロクエン酸(FC)によるアストロサイトの不活性化がペンチレンテトラゾール(PTZ)誘発けいれんに与える影響を評価した。
[方法]実験には7~8週齢の SD系雄性ラットを用い、FC(1 nmol)あるいは生理食塩水(対照)は右側脳室に微量注入した。FC投与から2時間後、灌流脳摘出を行い、後日、アストロサイトの活性化マーカーであるGFAPの免疫組織染色を行った。さらに、FC投与による海馬内グルタミン酸遊離量変化をin vivo microdialysis法により測定した。けいれん感受性評価では、FC投与から2時間後にPTZ(40 mg/kg, i.p.)を投与し、15分間のけいれん行動観察を行った。また、PTZ投与から2時間後に脳摘出を行い、神経興奮マーカーであるFosタンパク質の免疫組織染色に用いた。
[結果]FC脳室内投与により、嗅周-嗅内皮質、梨状葉皮質(PirC)、扁桃体外側基底核(BLP)、海馬CA2、海馬歯状回(DG)におけるGFAP陽性アストロサイトの発現が有意に減少した。また、FC投与により海馬内グルタミン酸濃度の一過性の増加がみられた。PTZにより誘発されるけいれん発作に対するFCの影響を評価した結果、FCを投与された動物ではPTZ誘発けいれんは増強し、また、BLP、DGにおけるFos発現が有意に増加していた。
[結論]本研究結果より、FCは扁桃体および海馬におけるアストロサイトの機能を抑制し、過剰な神経興奮をもたらすことでPTZ誘発けいれんの感受性を亢進させることが示唆された。