【背景・目的】エリスロポエチン(EPO)製剤は、ドーピング禁止薬物に指定されているが、赤血球の増加と運動パフォーマンス向上との因果関係は、科学的に証明されている訳ではない。これまでに、持続型EPO製剤であるダルベポエチンα(DPO)による運動パフォーマンス向上効果には性差があり、雌性マウスでのみ効果が認められることを明らかにしている。本実験では、性ホルモンの関与を明らかにする目的で、卵巣摘出マウスを用いてDPO投与による運動パフォーマンス向上効果を調べた。
【方法】5週齢時に卵巣摘出を行ったFVB/Nマウスに、7週齢時から強制回転かごを用いた1時間の運動を週5日間負荷した。遊泳能力が均等になるように2群に分け、コントロール群には生理食塩液を、DPO投与群には、DPO (10 μg/kg/week) を2週間皮下投与した。強制遊泳試験は週1回行い、遊泳試験終了後にヘマトクリット(Hct)値を計測した。最終遊泳の翌日に腓腹筋を摘出し、PGC-1α mRNA発現、筋線維横断面積および毛細血管密度を比較した。
【結果】卵巣摘出マウスへのDPOの投与は、Hct値を投与1週間後から有意に増加させ、無処置の雌性マウスの場合よりも、顕著な運動パフォーマンス向上効果を示した。DPOの投与は、腓腹筋においてPGC-1α mRNA発現を有意に増加させた。また、DPOの投与は、腓腹筋の筋線維横断面積を有意に増加させたが、毛細血管密度には影響を及ぼさなかった。
【結論】女性ホルモンは、DPOによる運動パフォーマンス向上効果に対してむしろ抑制的に作用していると考えられた。卵巣摘出マウスで認められたDPO投与による運動パフォーマンス向上効果には、腓腹筋におけるPGC-1α mRNA発現の亢進および筋肥大の関与が示唆されたが、血管新生は関与していないと考えらえた。