【背景・目的】
ミクログリアは先住的な中枢神経系のマクロファージ様細胞であり、神経保護的・傷害的な働きを有するとの報告がある。先行研究において、ラット新生児の大脳から作製した初代培養ミクログリアをアストロサイトから単離すると無刺激では48時間以内にほぼ死滅する。一方、アストロサイトから単離したミクログリアにリポポリサッカライド(LPS)を処置した場合には濃度依存的に急速な細胞死を示すが、死を免れた一部のミクログリアは長期間生存する。このLPS処置による長期生存には顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子(GM-CSF)の自己産生が関与している。加えて、これらの長期間生存ミクログリアは神経保護効果を示す。しかし、LPS処置によるToll様受容体4(TLR4)の活性化から、長期生存・神経保護に至るシグナル経路には不明な点が多い。そこで、LPS処置によるTLR4の発現量の変化を検討した。さらに、TLR4の下流に存在するNF-κB、p38MAPKに着目し、GM-CSF受容体下流に存在するSTAT5のリン酸化、および保護的ミクログリアのマーカーであるArginase-1の発現にNF-κBおよびp38MAPKが関与するか検討した。
【方法】
ラット初代培養ミクログリアは、新生仔大脳から作成した。初代培養ミクログリアにLPS (30 ng/mL)単独処置、LPS無処置/処置+BAY11-7082 (NF-κB阻害薬)処置、LPS無処置/処置+SB202190 (p38MAPK阻害薬)処置条件にて24時間処置したサンプルにてウエスタンブロットを行った。
【結果】
LPS処置ミクログリアにおいてTLR4の発現が増加し、この増加はBAY11-7082(2μM)またはSB202190(5μM)を併用処置により抑制された。また、LPS処置によりSTAT5のリン酸化が生じたため、GM-CSF受容体が活性化することが確認できた。このSTAT5のリン酸化は、BAY11-7082またはSB202190の併用処置により抑制された。さらに、Arginase-1の発現もLPS処置により増加し、この増加はBAY11-7082またはSB202190の併用処置により抑制された。
【考察】
LPS処置ミクログリアの長期生存・神経保護的性質の発現には、TLR4の下流に存在するNF-κBおよびp38MAPKシグナル系だけでなく、TLR4の発現増加が関与することが示唆される。