我々は眠気の実体を明らかにするために哺乳類のノンレム睡眠について神経細胞の活動パターンを担うイオンチャネル・ポンプについて、ノンレム睡眠時の神経活動の数理モデリングと、マウス睡眠表現型の解析システム(SSS法)、交配を必要としない独自のKOマウス作製技術(Triple-CRISPR法)を用いて、細胞内Ca2+動態に直接関与する一連のイオンチャネル・ポンプが睡眠時間制御に重要であることを見出した。さらに細胞内Ca2+が制御するリン酸化酵素に着目しCamk2a/b KOマウスが著明な睡眠時間の短縮を示すことを明らかにした。これはCaMKIIα/βが睡眠を誘導するリン酸化酵素であることを意味する。この発見を元に、睡眠恒常性において、神経細胞の興奮性の持続がカルシウム依存的なリン酸化制御を誘導し眠気を惹起する機構を提唱するに至った。本講演では、動物を用いた睡眠研究の現在を解説するとともに、ヒトにおける睡眠・覚醒リズム研究の現在やシステムに基づく医学(システム医学)の実現に向けた試み、特に睡眠健診の実現に向けた取り組みについても議論したい。