1型リアノジン受容体(RyR1)は骨格筋筋小胞体に存在するCa2+チャネルで、筋の興奮収縮連関に重要な役割を果たしている。RyR1の突然変異はチャネルの異常活性化を引き起こして悪性高熱症(MH)などの筋疾患を引き起こすことが知られており、RyR1阻害薬はそれらの疾患の治療薬となる。現在、ダントロレンが治療薬として使用されているが、溶解性が低い等の問題があり新しいRyR1阻害薬の開発が望まれている。我々は近年、RyR1を発現させたHEK293細胞の小胞体Ca2+濃度を測定することによりRyR1阻害剤のハイスループットスクリーニング法(HTS)を開発し、東京医科歯科大学が保有する機能既知化合物ライブラリー(1,535化合物)の中から3種類の新規化合物を同定した(Murayama et al., Mol Pharmacol. 94: 722-730, 2018)。しかしRyR1選択的阻害薬はオキソリン酸だけであり、残り2つの化合物は他のリアノジン受容体サブタイプ(RyR2、RyR3)も阻害した。そこで、我々はさらなるRyR1選択的阻害化合物を探索するため、同大学の別のライブラリー(2,880化合物)を用いて再びHTSを行った。その結果、新たに8種類のRyR1阻害化合物を同定し、そのうち4種類がRyR1選択的であることを見出した。キメラチャネルを用いた実験から、各阻害化合物が既存薬(ダントロレン、オキソリン酸)とは異なる部位に結合して作用することがわかった。これらの化合物はRyR1関連疾患の治療薬の候補となると考えられる。

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