【目的】2型糖尿病は高血糖状態の持続による小胞体ストレスや糖毒性などに起因する膵β細胞機能障害によりインスリン分泌の低下や膵β細胞死が惹起される。我々はこれまでに、ポリメトキシフラボノイド (PMF)である柑橘果皮成分 nobiletin がインスリン分泌促進作用や膵β細胞死抑制作用を示し、抗糖尿病効果を有することを報告している。しかしながら、他の柑橘フラボノイドの膵β細胞への抗糖尿病効果については不明である。Sudachitinはスダチ果皮に含まれるPMFであるが、メトキシ基の数がnobiletinより3つ少ない3つのメトキシ基を有するPMFである。本研究では、sudachitinの膵β細胞におけるグルコース誘発インスリン分泌やアポトーシスに対する作用を解析し、nobiletinとの作用の差異について明らかにすることを目的とした。
【方法】膵β細胞株INS-1細胞を用い、グルコース誘発インスリン分泌に対する柑橘フラボノイドの影響をバッチインキュベーション法にて定量した。また、thapsigargin誘発β細胞アポトーシスに対する各成分の作用についてウェスタンブロッティング法によるアポトーシス関連分子発現解析により評価した。【結果・考察】INS-1細胞において、11.1mM glucoseにより増加したインスリン分泌は10µM nobiletin処置により有意に増加したが、10µM sudachitin,処置では変化は認められなかった。しかし、100 µM sudachitinは有意にインスリン分泌増強作用を有していたことから、sudachitin はインスリン分泌促進作用を有するものの、nobiletinよりもその作用は弱いことが示唆された。また、thapsigargin 14時間処置により誘導されたcleaved caspase-3の発現は、10µM nobiletinにより有意に抑制されたが、10µM sudachitin処置では抑制されなかった。この結果から、細胞死抑制作用もnobiletinと比較してsudachitinは弱いことがわかった。以上の結果より、nobiletinはグルコース誘発インスリン分泌促進作用ならびに膵β細胞アポトーシス抑制作用についてsudachitinよりも優れた抗糖尿病効果を有することが確認された。

To: 要旨(抄録)