【 背景】第二世代抗ヒスタミン薬terfenadineは、過量投与、肝疾患や電解質異常の存在およびcytochrome P450阻害薬との併用でtorsade de pointes(TdP)を誘発しやすいことが知られている。代表的な催不整脈モデルである慢性房室ブロック(AVB)犬は、TdPが誘発されるとその大半は心室細動に移行して死亡するので、クロスオーバー比較試験には適さないが、AVBサルは発生したTdPが自然停止するため、同一個体を用いた試験を実施できる可能性がある。
【目的】AVBサルを用いて、①cytochrome P450阻害薬とterfenadineの併用投与、②溶媒および③terfenadine単独投与による不整脈発生をクロスオーバー法で評価し、薬物相互作用に基づくTdP発生を予測する試験系としての有用性を検討した。
【方法】雌雄カニクイザル(計n=4)を5% pentobarbital(25 mg/kg, i.v.)で全身麻酔し、カテーテル焼灼法を用いて、房室ブロックを作成した。術後12か月以上経過した個体にホルター心電計を装着し、①ketoconazole(100 mg/kg)投与1時間後にterfenadine(30 mg/kg)投与、②0.5% methylcellulose(MC、5 mL/kg)投与および③terfenadine(30 mg/kg)投与を1週間以上の投与間隔をあけて、無麻酔下で経口的に実施した。薬物投与1時間前から投与後21時間までの心電図を評価した。
【結果】動物の死亡は認めなかった。Ketoconazoleとterfenadineの併用では4例全例でTdPが誘発された一方、0.5% MCおよびterfenadine単独投与では誘発されなかった。TdP誘発回数は29±16回/21 h(4-73回/21 h)、TdP持続時間は3.5±0.4 s(1.3-20.6 s)であった。Ketoconazoleとterfenadineの併用は心室拍動数を変化させなかったが、QTcを有意に延長した。0.5% MCは心室拍動数を有意に減少させたが、QTcには影響を与えなかった。一方、terfenadine単独投与は心室拍動数を有意に減少させ、QTcを延長した。
【結語】AVBサルは薬物相互作用に基づくTdPの発生予測に適切な動物モデルであると考えられた。

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