【目的】Advanced glycation end products (AGEs) は糖尿病、高血圧症、冠動脈疾患やアテローム性動脈硬化といった疾患の発症・進展に関与することが知られており、高血糖状態や高脂血症、老化の進行で生体内濃度が増加することが知られている。血管そのものへの影響としてこれまで、内皮機能障害や平滑筋細胞の増殖や石灰化、遊走を引き起こすことが知られているが血管平滑筋収縮機能への影響についての報告はいまだ少ない状況である。そこで、器官培養法を用いてAGEsのラット頸動脈における平滑筋収縮機能への影響を検討した。【方法】 雄性 Wistar ラットより 総頸動脈を摘出し、リング標本を作製した。Vehicle あるいは AGE-BSA (0.001、0.01、0.1 mg/mL) を22-24時間処置した後、内皮除去標本をorgan bathへ懸垂し、高 K+、noradrenaline (NA)、serotonin (5-HT)、U46619 (thromboxane prostanoid receptor agonist) を累積投与することによる収縮反応を検討した。また、NAのuptakeに関与するorganic cation transporter 3 (OCT3) の阻害薬である corticosterone (CS) を共処置することによる NA 収縮について検討した。収縮反応は 80 mM high K+の収縮力で normalize した。【結果及び考察】高 K+、5-HT による収縮反応は、全ての群で変化が認められなかった。Vehicle 処置群と比較して、AGE-BSA (0.1 mg/ml) 処置群において、U46619誘発収縮が増大した。一方、Vehicle 処置群と比較して、AGE-BSA (0.01、0.1 mg/ml) 処置群において、NA 誘発収縮の減弱が認められた。AGE-BSA で認められたNA収縮の減弱は、CS 共処置によって抑制された。以上より、ラット頸動脈において AGE-BSA は収縮反応に対しリガンド特異的な影響をもたらし、NA 収縮の減弱には、OCT3 が関与することが明らかとなった。

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