循環器系と自然免疫系のクロストークに関するエビデンスが構築されつつあるが、循環器疾患の病態形成における自然免疫系の役割については完全に明らかとされていない。特に、免疫系における主要な分子の一つであるtoll-like receptors (TLRs) に関し、高血圧、脳卒中、動脈硬化といった循環器疾患の病態生理学的意義について焦点を当てた研究が近年加速しつつある。しかしながら、TLRsシグナルを活性化する分子の血管機能への直接的な影響については、未だ不明な点が多い。TLRファミリーメンバーのうち、TLR3は、様々な細胞に発現が認められ、血管平滑筋細胞にも発現していることが知られているが、血管収縮、弛緩といった機能における役割についてのエビデンスは少ない。TLR3は、細胞内のエンドソームに局在する細胞内受容体であり、ウイルス由来のdouble-strand RNA (dsRNA) あるいはネクローシスを起こした細胞から放出されたdsRNAにより活性化される。そこで、演者らはTLR3リガンドであるウイルスRNAを模倣するdsRNAアナログのpoly I:Cを用い血管機能に対する直接的な影響を検討した。器官培養法を用いて、poly I:Cをラット上腸間膜動脈に暴露したところ、nitric oxideによる弛緩反応が減弱することを見出した。本シンポジウムでは、TLR3リガンドが血管平滑筋機能に影響を与えることについて、また、そのメカニズムについて、演者等の検討を中心に述べ、さらにTLR3関連シグナルの血管病に対する治療標的としての可能性について議論したい。