最近の疼痛研究領域において、最先端神経科学研究や遺伝子工学領域研究との融合や応用により、疼痛制御における脳-末梢間クロストーク解析を基盤とした神経-免疫連関に関する研究が展開されるようになってきた。こうした、オープンシステム疼痛科学への取り組みが始まってきたことで、大規模臨床研究で明らかになった「痛みの残存が様々な生体応答に負の影響を与え、生命予後を悪くする」という結果を科学的に立証することができる期待が高まってきている。我々は、神経科学研究領域の新しい技術を駆使し、人工的に知覚神経活動を制御することで、様々な疾患モデル動物に特定の期間、特定の刺激頻度で"痛み刺激"を負荷することを可能としたことから、現在、痛みによる免疫変動と生命予後に関する統合的解析を行っている。一方、iPS 細胞は多能性幹細胞であり、患者を含む特定の個人由来の体細胞より樹立され、目的の細胞へ分化誘導を行うことにより、難治性疾患の病態解析や治療法開発への応用が可能である。我々は、難治性神経疾患の病態解析を行う目的で、パーキンソン病患者 iPS 細胞由来ドパミン神経細胞におけるエピジェネティクス修飾を伴った網羅的な遺伝子発現解析を行ったところ、いくつかの遺伝子の劇的な発現変動を見出した。こうして抽出された候補遺伝子と、パーキンソン病の表現系との相関関係を解析するために、Cre-loxp システムに従い、マウスの黒質ドパミン神経細胞特異的に候補遺伝子の発現を調節したところ、ドパミン関連行動の著しい低下を見出した。こうした"リバーストランスレーショナルニューロサイエンスリサーチ"を展開することで、大規模臨床研究やヒト検体から得られる結果を基礎的に再現、立証し、さらには新しい治療指針を導き出すことが可能となる。本講演では、こうした次世代型リバーストランスレーショナルリサーチの新展開について紹介し、その必要性、重要性について言及する。

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