チロシン脱リン酸化酵素PTPN22(Lyp)は、GWASにおいて様々な自己免疫性疾患と強い相関が示され、特にアミノ酸変異(R620W)を伴うSNPs産物が注目されている。本研究は、自己抗原への感受性を下げる分子機構として、PTPN22およびPTPN22(R620W)変異体によるT細胞受容体(TCR)活性調節の解明を目的とする。
抗原を認識したT細胞抗原受容体(TCR)がクラスターを形成し活性化を開始する様子は、人工脂質膜と全反射蛍光顕微鏡を用いて詳細に観察されている。そこで、T細胞活性化を抑制するPTPN22とTCRミクロクラスターの同時観察を行ったところ、PTPN22はTCRミクロクラスターへ集合した。しかし、ZAP70キナーゼなど活性化分子の速やかな集合に比べると30秒程度遅く、ネガティブフィードバックとして働くと考えられた。一方でPTPN22(R620W)変異体は、TCRミクロクラスターへの集合量が減少した。
次にPTPN22の分子制御を明らかにするため、マススペクトル解析を用いて会合分子を探索したところ、それぞれが自己免疫性疾患と相関をもつ複数の脱リン酸化関連分子が同定された。これら抑制性分子もPTPN22同様に、TCR活性化に伴ってTCRミクロクラスターに集合した。興味深いことにPTPN22(R620W)変異体は、それらの分子との結合も弱かった。
PTPN22は、TCR活性化に依存して、複数の脱リン酸化酵素関連分子と抑制性分子集合体を作りながらTCRミクロクラスターに遅れて集合し、TCR活性化シグナルを抑制している事が予測される。R620W変異体では、TCRミクロクラスターへの集合、他抑制性分子との結合の両方が阻害され、抑制活性が不十分となり、自己抗原など弱い刺激で活性化される可能性が考えられる。

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