【背景・目的】チロシンキナーゼ阻害薬imatinibは慢性骨髄性白血病、Philadelphia染色体陽性急性リンパ性白血病およびKIT陽性消化管間質腫瘍に対する分子標的治療薬である。臨床使用ではうっ血性心不全などの心毒性が報告されているが、その発生機序を詳細に検討したin vivoの研究はない。本研究では、imatinibの心血管系に対する作用をハロセン麻酔犬モデルを用いて詳細に評価した。
【方法】体重約10kgの雌性ビーグル犬(n=4)を1%halothaneで吸入麻酔し、1および10 mg/kgのimatinibを10分間かけて累積的に静脈内投与した。心拍数、体血圧、左室圧、心拍出量、体表面心電図、His束電位図、洞調律時と心室ペーシング時の心室単相性活動電位および心室有効不応期を測定した。また、経胸壁心臓超音波検査で左室収縮能および拡張能を評価した。さらに、組織障害マーカーとして血中の心筋トロポニンI、CPK、ASTおよびLDH値を測定した。
【結果】低用量のimatinibは総末梢血管抵抗を低下、QTcを延長、血中ASTとLDH値を上昇、等容性弛緩時間を延長させた。高用量は、低用量での効果に加えて、左室内圧最大降下速度を低下、HV間隔を延長、CPK値を上昇、左室拡張末期径および左室拡張末期容積を増加させ、E/Aを1未満に低下させた。その他の指標に有意な変化を示さなかった。実験中に血行動態の破綻、左室収縮能の低下および致死性不整脈の発生は観察されなかった。
【結語】うっ血性心不全を示唆する左室拡張末期圧の上昇や肺水腫の所見を認めなかった。血中のCPK、ASTおよびLDH値が上昇したことから、細胞組織障害が左室拡張能低下に関与したと考えられた。

To: 要旨(抄録)