【目的】カニクイザルに完全房室ブロック(AVB)を作製し、dl-sotalolによる薬物性torsade de pointes(TdP)の発生、心臓の組織・形態学的変化および神経体液性因子の反応を経時的に評価した。【方法】2-3歳齢の雄性カニクイザル(n=10)にAVBを作製後15ヵ月間、TdP誘発性、心電図、心エコー図検査による心血行動態、血漿中神経体液性因子および血液・生化学的指標を1ヵ月ごとに評価した。TdPが誘発された一部の個体で病理組織学的検査および左室心筋の遺伝子発現解析を実施した。【結果】AVB作製により持続性徐脈が評価期間中維持され、dl-sotalolの投与によりTdPが10例中6例で観察された(~1ヵ月:1/10例、~4ヵ月:4/10例、~8ヵ月:5/10例、~12ヵ月:6/10例)。AVB作製直後には1回拍出量(5.0→4.7 mL)および左室駆出率(56→53%)が減少したが、1ヵ月後にAVB作製前の値よりも増加し(8.8 mL, 67%)、この状態は評価期間中維持された。心胸郭比はAVB作製前の52%から1ヵ月後に60%、8ヵ月後に63%へ増加した。QTcFはAVB作製前(396)と比べて作製後も変化を認めなかったが、15ヵ月の時点で初めて延長した(425)。平均血圧は、AVB作製直後に低下し(61→43 mmHg)、この低下は15ヵ月後まで維持された。血漿中神経体液性因子の内、ANPおよびアンジオテンシンⅡはAVB作製前と比べて15ヵ月後に増加した(7.2→143.4 pg/mLおよび17.1→53.8 pg/mL)。血液・生化学的検査の指標は、評価期間中、正常範囲内に保たれていた。AVB作製後7ヵ月までで、dl-sotalolにより3回以上のTdPが誘発された個体(n=2)では、心筋線維の肥大、心筋層の線維化および心筋線維の変性・壊死が認められた。同個体の左室心筋の遺伝子発現解析では、KCMF1の発現量が1/2以下に低下していた。また、心臓の形態学的・機能的な経時変化は他の個体と同程度であったが、QT間隔がより延長していた。【結論】AVB作製後の心臓における形態学的・機能的・電気生理学的変化が薬物性TdP発生の必要条件であるが、ベースラインのQT延長が催不整脈モデルとしての完成条件と考えられた。

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