【背景】脳血管が閉塞することにより細胞が虚血状態に陥ると興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の大量放出が惹起される。過剰なグルタミン酸の放出は N-methyl -D-aspartate (NMDA) 受容体を介した神経細胞内への過剰な Ca2+ 流入を誘導し神経細胞死を惹起する。本研究室ではこれまでの網膜神経節細胞を用いた研究で、グリア細胞から放出されるアポ E を含む lipoprotein (LP) がグルタミン酸誘発性の神経細胞死に対して保護効果を発揮することを報告している。その機序として low density lipoprotein receptor related protein 1 (LRP1) を介する NMDA 受容体依存性の過剰なカルシウム流入の制御機構を明らかにした。本研究では初代培養大脳皮質神経細胞および初代培養神経幹細胞を用いて虚血性神経障害後の LRP1の変化と神経細胞生存の関連を解析した。
【方法】初代培養大脳皮質神経細胞は、胎生 16 日目のラットから単離し 10 日間培養した。初代培養神経幹細胞は 7 日間培養した後、分化誘導を行った。分化誘導後 3 日目の細胞を実験に使用した。NMDA 受容体のリガンドである NMDA、グルタミン酸または oxygen-glucose deprivation (OGD) 処置により細胞死を誘導した。各処置後 4 時間目にwestern blot法で各種タンパク質量、24 時間目に細胞生存率を検討した。
【結果・考察】初代培養大脳皮質神経細胞は NMDA 処置および OGD 処置により神経細胞死が誘導され、この細胞死に伴い処置後 4 時間目には LRP1 の細胞内ドメイン (ICD) の産生が惹起された。また、この細胞死に伴う ICD の産生は、グルタミン酸および OGD 処置後の神経幹細胞においても同様に観察された。すなわち、本研究はNMDA 処置により 大脳皮質神経細胞のLRP1 の切断が誘導されるとともに ICD が産生されることを示した。また、この ICD の産生はグルタミン酸および OGD 処置後の分化誘導後神経幹細胞においても観察された。本研究結果は、大脳皮質神経細胞および神経幹細胞が LRP1 の切断機構を有し、この機構による ICD の産生が病態形成に関与する可能性を示した。これらのことから、本研究は LRP1 の切断機序の解明とその抑制が神経細胞保護に寄与する可能性を示した。

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