【目的】喘息時の気道過敏性(AHR)の一因として、過剰な気管支平滑筋(BSM)収縮が挙げられる。演者らはこれまでに、喘息マウスのBSM組織を用いたDNAマイクロアレイ解析の結果、arachidonic acid metabolism pathwayの変化を証明した。さらに、気管支肺胞洗浄液(BALF)を用いたlipidomics解析の結果、prostaglandin D2(PGD2)やPGE2等各種prostanoidsの増加を見出した。本研究では、抗原誘発BSM過敏性に対するcyclooxygenase (COX)阻害薬in vivo前処置の効果を観察し、喘息時のAHR発現におけるCOX代謝産物の役割について検討を行った。【方法】雄性BALB/cマウス(7週齢)を用い、ovalbumin抗原にて感作、追加感作および抗原反復吸入チャレンジを行うことにより気管支喘息モデルマウスを作製し、実験に供した。COX阻害薬としてaspirin (ASP)を用い、各抗原チャレンジの1 hr前に80 mg/kgを腹腔内投与した。さらに、摘出BSM組織へのindomethacin (Indo)処置を行い、acetylcholine (ACh)収縮に対する影響を観察した。【結果および考察】正常群と比較して、喘息群のAChに対するBSM収縮反応性は著明かつ有意に増大しており、BSM過敏性の獲得が確認できた。ASPのin vivo前処置は正常群BSM組織のACh収縮反応性を有意に増加させ、Indoのin vitro前処置でも同様の結果が得られた。一方、COX阻害薬によるこれら収縮反応性の変化は喘息群のBSM組織では認められなかった。したがって、正常時にはおもに収縮抑制性COX代謝産物がBSM toneを調節しており、喘息時にはこれら抑制性因子の産生が減弱している可能性が示唆された。さらに、COX代謝産物産生の非特異的な阻害では、AHRを改善できない可能性が示唆された。一方、正常群ではin vivo持続的COX阻害によりBSM過敏性が形成される可能性が示唆され、アスピリン喘息との関連性が興味深い。

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