【目的】近年、気管支喘息発症率は世界的に増加傾向にあるが、発症の詳細なメカニズムは未だほとんど解明されていない。また、気道過敏性 (airway hyperresponsiveness; AHR) は、アレルギー性気管支喘息患者共通に認められ、喘息病態の本質因子であり増悪因子とされている。当研究グループは、気道過敏性モデルマウスより摘出した気管支平滑筋のcarbachol (CCh)に対する反応性は、正常動物のものと比較して、著明かつ有意に亢進していることが明らかにしている。その原因の1つとして低分子量 G タンパク質である Rac1の発現増加を介した収縮反応性の亢進が原因の一端であることを示唆している。しかしながら、AHR 状態の気管支平滑筋における収縮性アゴニスト誘発 Rac1 活性化の変化については明らかにしていない。そこで本研究では、抗原誘発気道過敏性モデルマウス気管支平滑筋における特異的Rac1 GEFであるTiam1 および Trioの発現変化を検討し、さらに収縮性アゴニスト誘発Rac1の活性化を比較検討した。【方法】抗原誘発気道過敏性モデルは、BALB/c系マウスにovalbumin抗原にて感作し、同抗原を反復吸入チャレンジさせることにより作成した。最終抗原チャレンジ終了24時間後に実験を供した。タンパク質およびリン酸化タンパク質量の比較には Western blot 法、mRNA 発現量の比較には定量的RT-PCR 法を用いた。また、Rac1活性化の検出にはpull-down法を用いた。【結果および考察】気道過敏性マウスの気管支平滑筋は high K+ に対する反応性に変化が認められないものの、CChに対する反応性は有意に亢進していることを確認した。このCCh による過剰な気管支平滑筋収縮反応は Rac1 inhibitorであるNSC23766およびEHT1864により有意に抑制された。さらに、同モデルマウスにおいて、Rac1、Tiam1およびTrioの有意な発現上昇および Rac1 の活性化が認められ、CCh によりさらなる Rac1 の活性化がみられた。以上の結果より、抗原誘発AHR時における過剰な気管支平滑筋収縮反応の亢進にはRac1の発現増加だけではなく、Tiam1およびTrioの発現上昇を介したRac1の活性化を伴う収縮反応機構が亢進している可能性が示唆された。

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