【目的】月経困難症、不妊症などで生殖年齢女性のQOLを損ねる子宮内膜症の進展に血管およびリンパ管新生の関与が示唆されている。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は痛み刺激や炎症などによって知覚神経終末から遊離される神経ペプチドである。我々はCGRP受容体のサブユニットである受容体活性調節蛋白1(RAMP1)が血管やリンパ管を新生して腫瘍増殖や創傷治癒に関与することを報告した。そこで、RAMP1シグナルが脈管新生を増強して子宮内膜症を進展させる可能性と、RAMP1の役割を解明することを本研究の目的とした。
【方法】 9-12週令C57BL/6マウス(野生型,WT)とRAMP1ノックアウトマウス(KO)を用いた。ドナー(WTまたはKO)マウスの子宮内膜移植片を、あらかじめ卵巣摘出術を施行した宿主(WTまたはKO)の腹膜に移植するマウス異所性子宮内膜症モデルを作成した(WT→WT,KO→KO)。移植後14日目に移植片を摘出し、子宮内膜移植片面積、血管・リンパ管新生およびその関連因子について、免疫染色やPCRなどで比較検討した。
【結果】移植後14日目の、子宮内膜移植片面積ならびに移植片内の血管密度・リンパ管密度はWT→WTに比べてKO→KOで減少した。また血管新生因子(VEGF-A)やリンパ管新生因子(VEGF-C,D)の発現もKO→KOで減弱した。二重免疫染色にてRAMP 1は移植片のマクロファージ(CD11b陽性細胞)や線維芽細胞(S100A4陽性細胞)に共発現した。また脈管新生に関与する細胞はマクロファージと線維芽細胞であった。さらに移植片集積マクロファージと線維芽細胞はWT→WTに比べてKO→KOで減少した。分離培養骨髄由来マクロファージをCGRPで刺激するとRAMP1シグナルに依存して脈管新生因子発現が増強した。また培養線維芽細胞(L929)においてもCGRP刺激でリンパ管新生因子発現が増強した。
【結論】異所性子宮内膜症モデルにおいて、神経ペプチドCGRPはマクロファージや線維芽細胞のRAMP1受容体に作用して血管・リンパ管新生を促進させ、子宮内膜症進展に貢献していることが示唆された。