【目的】国民病と言われる「がん」において、がん患者のQOLを著しく低下させるがんの痛みは、モルヒネなどの鎮痛薬でも十分な制御ができないことが少なくなく、患者のQOL向上のために新規鎮痛薬を開発することは喫緊の課題である。北里大学薬学部生命薬化学研究室では、7-アザノルボルナンという立体的なテンプレート分子を修飾することで、薬物として有利な性質を持ちやすいとされる立体的な化合物ライブラリーを構築している。本研究では、同方法を用いて合成された化合物を用い、「痛み」に関係するターゲット分子(チャネル・受容体)であるオピオイド受容体(OR;μ、δ、κOR) およびtransient receptor potential (TRP)チャネルへの作用に着目し、各化合物の活性評価を行った。
【方法】新規化合物は、テンプレート分子を含む96wellプレートに種々の化合物を添加することにより合成を行なった。新規化合物の評価は、薬剤投与で生じる細胞内外の電気抵抗変化をイオンチャネルおよび受容体の活性として評価できるCellKeyTMシステムを用いて行った。μ、δ、κORならびにTRPチャネルであるTRPA1、TRPV1、TRPM8を安定発現させた6種類のHuman Embryonic Kidney 293細胞を用い、それらの活性を評価した。
【結果】96wellプレート上で合成された新規の88化合物を精製せずにμ、δ、κORおよびTRPA1、TRPV1、TRPM8発現細胞に投与し、その活性を評価したところ、δORとκORに対してそれぞれ1wellに含まれる化合物が活性を示した。一方TRPA1、TRPV1、TRPM8およびμORに関しては、用いた化合物の中に活性を示すものは認められなかった。
【考察】δORおよびκOR活性を示したそれぞれの化合物は、ベンジル基やフェニル基などの大きな構造を有しており、これらのサイズおよび形状が受容体活性化に関与していることが考えられた。今後は、上記活性を示した化合物を単離・精製し純度を高め、さらに詳しい解析を行う。さらに同合成法を改良発展させることで新規鎮痛薬開発のための基盤構築を目指す。