【背景・目的】エリブリンは、手術不能または再発性乳がんなどに適応される微小管重合阻害薬である。スタスミンは、αβチューブリンヘテロダイマーを捕捉することにより微小管の脱重合を促進するリン酸化タンパク質であり、乳がん細胞では高発現が認められている。スタスミンの微小管脱重合活性は、N端側に存在するセリン残基のリン酸化により制御されている。スタスミンは、細胞内の微小管動態を調節する重要因子であるが、エリブリンの抗腫瘍活性とスタスミンとの関係は不明である。本研究では、ヒト乳がん細胞株を用い、エリブリンの作用発現におけるスタスミンの関与について調べた。【方法】乳がん細胞株MCF7とMDA-MB-231(トリプルネガティブ乳がん細胞株)を用い、スタスミンのリン酸化に対するエリブリンの効果を検討した。また、エリブリンによるスタスミンのリン酸化が観察されたので、その機構についてプロテインキナーゼA(PKA)阻害薬(H89)、Ca2+/カルモジュリン依存性キナーゼⅡ(CaMKII)阻害薬(KN62)、セリン/スレオニンホスファターゼPP2A阻害薬(オカダ酸)、PP2A活性化薬(FTY720)を用いて検討した。【結果・考察】MCF7及びMDA-MB231においてエリブリンは、スタスミンのリン酸化を誘導した。このエリブリンによるスタスミンのリン酸化は、H89やKN62の前処置により減弱した。さらに、スタスミンのリン酸化は、オカダ酸の前処置により促進され、その一方でFTY720により抑制された。以上、乳がん細胞においてエリブリンが、PKAとCaMKIIの活性化とPP2Aの阻害を介してスタスミンのリン酸化を誘導することを明らかとし、エリブリンの抗腫瘍活性におけるスタスミンのリン酸化誘導機構の関与を示唆した。