【緒言】X線照射のホルメシス効果の論文のほとんどは、動物を使用した実験であった。また、低線量のX線照射を受けた動物由来の細胞増殖の促進が報告されている。しかし、細胞レベルでの解析は十分になされていない。今回、X線照射の細胞に対する直接的傷害効果を判定できる実験系を先ず構築することに主眼を置き、抗酸化剤や茶抽出液の保護効果を測定する条件検討を行った。【方法】X線照射は、診断用X線装置(UD150L-30W, SHIMAZU)を用いて行った。ヒール効果の影響を考慮し、X線管(X-ray tube, SHIMAZU, P38DE 80s)の陰極側にサンプルを配置した。また、後方散乱減少の目的からアクリル板4 cmをサンプル後方に敷き、焦点—サンプル間距離を36 cmとした。照射条件は、100 kV,200 mA,0.2 sとした。線量測定は、医療被ばく線量測定で使用されている患者皮膚被曝線量計(Unfors Instrument Incorporated:Patient Skin Dosimeter 以下PSD)で実施した。PSDの校正については、線量率依存性およびエネルギー依存性等を考慮し、測定値に補正計数を乗じたものを投与線量とした。4種のヒト口腔扁平上皮癌細胞(Ca9-22, HSC-2, HSC-3, HSC-4)、ヒト口腔正常細胞(歯肉線維芽細胞HGF、歯根膜線維芽細胞HPLF、歯髄細胞HPC)、ヒト骨髄性白血病細胞(HL-60, ML-1)を96穴プレートに撒き2日培養して付着させた。これらの増殖期の細胞に、56, 113, 226, 452, 904 mGyの線量のX線を照射し、2日後に、生細胞数をMTT法により計算した。X線照射時に抗酸化剤を存在させるとX線の傷害効果が減弱されるか否かを検討した。【結果】①ヒール効果により、96穴プレートの左側と比較し、右側に到達したX線の線量が、約10%減少することが判明したため、96穴の左側に細胞を播種することにした。②プレートの覆いによるX線量の減弱は、0.7%程度であったので、覆いをしたまま照射した。③抗酸化剤添加により若干のX線傷害回復効果が観察された。【考察】X線照射による細胞傷害の程度が、プレートのwellの置かれた位置により、かなり変動することが判明した。現在、X線照射による細胞傷害効果を定量的に測定できる系の再構築を行い、抗酸化剤の保護効果の有意性について再検討中である。