【背景・目的】
骨は骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨破壊によりその平衡が保たれている。閉経期以降の女性ではエストロゲンの産生量が減少し、破骨細胞による骨破壊が亢進して骨粗鬆症を発症しやすくなる。プロスタグランジンD2(PGD2)の合成酵素であるリポカリン型PGD合成酵素(L−PGDS)は、エストロゲンによりその発現量が変化することが報告されているが、骨代謝におけるその意義は明らかにされていない。本研究では、L−PGDSがエストロゲン枯渇による骨代謝異常に与える影響を解明することを目的とした。
【方法と結果】
CTを用いた脛骨近位端の骨量測定により、野生型マウス(WT)と比較して同週齢のL−PGDS欠損マウス(L−PGDS−/−)では、骨量が減少していることがわかった。免疫染色により、骨芽細胞と破骨細胞の両方がL−PGDSを発現していることが確認された。カルセイン標識とHE染色により、L−PGDSの欠損が骨芽細胞を活性化して骨形成を亢進すると同時に、破骨細胞を増加・活性化して骨破壊も亢進することが分かった。これらのマウスの卵巣を摘出(OVX)して6週間後、WTの脛骨で破骨細胞の増加・活性化と骨量の減少が確認された。それに伴い、L−PGDSのmRNA発現の減少が確認された。一方で骨破壊が亢進しているL−PGDS−/−では、OVXにより骨量が減少しなかった。またエストロゲン(10 ug)の皮下への補充は、減少したWTの脛骨骨量を回復したが、L−PGDS−/−は回復しなかった。WTから単離した骨芽細胞にエストロゲン(0.01 nM)を処置するとL−PGDSのmRNAの発現量が上昇と、培養上清中のPGD2産生量が上昇した。一方、L−PGDS−/−より単離した骨芽細胞では、これらの反応はみられなかった。単離した骨芽細胞を骨形成培地で培養したところ、WTと比較してL−PGDS−/−の骨芽細胞で石灰化能が高く、破骨細胞分化を誘導するRANKLのmRNA発現量が高かった。骨髄細胞を破骨細胞分化条件で培養したところ、L−PGDSの欠損は破骨細胞の分化に影響を与えなかった。
【結論】
L−PGDSは骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨破壊を抑制することが分かった。また、エストロゲンの枯渇によりL−PGDSの発現が減少して骨代謝の平衡が崩れた結果、骨破壊が亢進する可能性が示唆された。