オリゴデンドロサイトはミエリン形成を担い、神経間の信号伝達を制御している。運動学習が成立すると、そこには何らかの神経活動の亢進や新規ミエリン形成がある事が分かっている。しかし、神経からミエリン形成への作用については詳しくは分かっていない。本研究ではこの作用を研究するため、各細胞の構造変化に着目した。神経活動が長期的に起これば、何かしらの構造変化が起きるはずである。この構造変化を知れば、起きた現象を推測する事が出来る。構造変化解析には構造MRI技術の一つである拡散テンソル画像法 (DTI)と超解像顕微鏡(SRM)観察による組織学解析を用いた。DTIは軸索やミエリンの構造変化が起こっている脳領域を全脳探索的(マクロに)に解析できる。そしてその構造変化が起こっている領域に着目し、SRMを用いたミクロな解析によって具体的な構造変化を探る。SRM観察は免疫染色と相性が良く、共焦点顕微鏡よりも高分解能な解析が可能であるため、電子顕微鏡でしか行えなかったミエリン解析を可能とした。運動機能を司る線条体に着目し、線条体神経細胞にチャネルロドプシン(ChR2-YFP)が発現したマウスを1週間光刺激(0.5s/h)した後、構造解析を行った。DTI解析の結果、ミエリンの構造を反映しているfractional anisotropy (FA)という値が線条体で増加し、運動野では減少している事が分かった。この時、超解像顕微鏡を用いたミエリン解析では、線条体でのミエリン厚(線条体を貫通する皮質神経の軸索ミエリンを観察)は増加し、運動野では減少していた。しかし、刺激を受けた線条体神経細胞自身は樹状突起と軸索が細くなっていた。この時、光刺激によって誘導される運動活動は刺激によって徐々に減少した。これらの事から、線条体神経細胞の興奮によって、並走する皮質神経のミエリンは太くなったが、運動野の機能は減少したと考えられる。光遺伝学による介入は選択制は高いが、強い介入である。そこでより生理的な介入を行う為、マウスに運動学習(レバー押しオペラント学習)を行わせ、構造解析を行った。その結果、同様に運動野と線条体での構造変化が観察できた。これらの結果から、神経活動の誘導によりミエリン形成を誘導出来る事が分かった。ここから、ミエリンの構造変化を知る事で運動学習の獲得を特徴付けられるのではないかと考えている。

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