モデル動物の行動解析は、薬理学研究における基盤技術の一つであり、さまざまな手法が開発されている。小型脊椎動物であるゼブラフィッシュの行動解析を薬理学研究に利用した報告も増えており、その重要性が認識されつつある。ゼブラフィッシュの発生は比較的早く、受精後5日目には様々な行動レパートリーを示す。この時期のゼブラフィッシュの体長は3mm前後であり、特殊な装置を用いることにより、96穴プレートの各ウェル内におけるゼブラフィッシュの行動を網羅的に解析することも可能である。本研究では、近年著しく普及率が高まっているスマートフォンやタブレットのカメラ機能を利用したゼブラフィッシュの行動解析法の開発を試みた。3Dプリンターを用いて特殊なアダプターを作製し、スマートフォン・タブレットのカメラの上面に接着した。このアダプターにチャンバースライドを載せ、チャンバー内のゼブラフィッシュ仔魚の行動を記録し、公共画像解析ツールImageJのプラグインであるAnimal Trackerを用いて解析を行なった。その結果、4-aminopirydineによるゼブラフィッシュの痙攣誘発作用を定量的に評価することができた。本研究で開発した手法は、ゼブラフィッシュの行動解析を低コストかつ簡便に行うことを可能にし、様々な薬理学研究に活用しうると考えられる。