【目的】
現在、不眠治療にはベンゾジアゼピン(以下BZD)及び非BZD系睡眠薬、ラメルテオン、スボレキサント(以下SUV)が主に使用されているが、特にSUVは精神科以外でのデータの蓄積が十分ではない。本研究では精神科以外の睡眠薬使用中の外来患者を対象に、不眠状況と睡眠薬への主観的評価について調査を行った。
【方法】
本研究は単剤で睡眠薬を定期あるいは頓服で4週間以上使用している精神科以外の診療科の外来患者43名を対象とした。調査は、アテネ不眠評価尺度(以下AIS)による夜間の不眠と日中の眠気についての8項目の質問及び睡眠薬への主観的評価に関する21項目のアンケートを行った。なお、本研究はスギ薬局学術研究・倫理委員会の承認を得て行った。
【結果】
AIS総スコアは、SUV群(6.0±3.2, n=10)とBZD/非BZD群(4.2±3.0, n=32)との間で有意な差は見られなかったが、AISの中でも日中の眠気のスコアは、SUV群がBZD/非BZD群よりも有意に高かった(p=0.022)。また、睡眠薬に対する効果や副作用の実感等の各項目において、両群間で有意な差は認められなかった。睡眠薬の種類によらず、AIS総スコアと睡眠薬への満足度(r=-0.478)及び効果の実感度(r=-0.495)との間には負の相関が認められ、睡眠薬への満足度と効果の実感度には強い正の相関(r=0.795)が認められた。さらに、AISの入眠困難のスコアと服用期間には正の相関(r=0.399)が、AISの日中の眠気のスコアと薬識(睡眠薬の効果・副作用の知識)には負の相関(r=-0.362)が認められた。
【考察】
本研究において、SUVはBZD/非BZDと同程度の催眠作用を有しており、不眠治療の選択肢の1つになることが示唆された。しかし、SUVはBZD/非BZDと比較して、日中の眠気を誘発しやすいことが示唆されたことから、SUVを使用する際には、この点について注意喚起する必要がある。一方、睡眠薬の長期使用により入眠障害の慢性化を引き起こすことや、日中の眠気に関する副作用に対して、患者の薬識が十分でないことが示唆された。以上より、睡眠薬の適正使用において、早期介入により患者の睡眠薬への満足度や効果の実感度の向上を目指すことで入眠障害の慢性化を防ぐとともに患者の副作用に対する薬識の向上に努めることが重要である。