p13はII型糖尿病モデルマウスの膵島における発現減少を指標に同定されたミトコンドリア局在蛋白質である。これまでに私たちは、p13を膵島に過剰発現させたトランスジェニックマウスを作製し、本マウスではII型糖尿病下選択的に、平均膵島サイズの増加や酸化ストレスの減少などが認められることを明らかにした。そこで今回私たちは、内因性のp13の機能を明らかにするため、p13の遺伝子欠損(KO)マウスを作製し、その膵内分泌機能を解析した。膵組織切片の組織化学的検討からは、膵臓量の有意な減少が示されたが、膵島数や平均膵島サイズには有意な変化は見られなかった。しかし、膵島を大きさ別に解析すると、切片上において面積0.001 μm2未満となる極めて小さい膵島の数や割合が、p13-KOマウスでは有意に増加していることが分かった。さらに、インスリンやグルカゴン染色の結果から、p13-KOマウスでは膵島面積に対するグルカゴン陽性面積が有意に増加しており、グルカゴン陽性面積をインスリン陽性面積で除した値も有意に増加していた。またグルコース負荷試験を行ったところ、p13-KOマウスではグルコース投与後の血糖値上昇が大きく低下することが分かった。これらの結果から、内因性のp13はグルコース恒常性において重要な働きを担うことが明らかになり、p13-KOマウスのグルコース恒常性異常の分子病態として、膵島のサイズ分布や、膵島内でのα細胞とβ細胞の構成比の異常が示唆された。