運動療法は、食事療法、薬物療法と共に、主要な糖尿病治療の一つである。運動効果の一つとして、AMP活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)の活性化が挙げられており、インスリンとは無関係に、グルコーストランスポーター4 (GLUT4)の膜移行を誘導し、インスリン抵抗性の改善に寄与している。一方、糖尿病患者は、血糖値が上昇する結果として、タンパク質のO-GlcNAc修飾が亢進している。O-GlcNAc修飾はO-GlcNAc転移酵素(OGT)で酵素的に付加され、糖尿病に合併する心筋や血管内皮の機能不全などに関与している。AMPKはOGTの標的であり、OGTはAMPKでリン酸化されることが報告されているがその詳細は不明である。まずマウス筋芽細胞C2C12を用いて、AMPK活性化薬であるAICAR添加の影響を検討した結果、AMPKのO-GlcNAc修飾が亢進することを見出した。「AMPK/OGTクロストーク」の存在を示唆している。そのAMPK/OGTクロストークを詳細に検討するため、ヒト胎児腎細胞HEK293およびC2C12を用いて、インスリン抵抗性と関連性のあるGLUT4の膜移行を生細胞で解析するため、Glut4遺伝子をC2C12細胞からクローニングし、mCherryタンパク質との融合タンパク質(GLUT4-mCherry)として発現させた。GLUT4-mCherryの発現が予想通り核周囲に認められたため、HEK293細胞及び、C2C12細胞でその安定発現株を樹立した。樹立した細胞では、AICAR及びインスリンによる膜移行が観察された。このシステムを用いてAMPK/OGTクロストークの詳細を明らかにできれば、運動療法の新たなプロトコールの開発につながることが期待できる。